日本腎不全外科研究会代表世話人をお務めであった久木田和丘先生が2023年11月18日ご急逝されたことを受け、第33回腎不全外科研究会世話人会で代表世話人へご推挙いただきました前野七門です。どうぞよろしくお願い申し上げます。
2023年秋の久木田和丘先生の突然の訃報に接し、本当に驚愕いたしました。ここで久木田先生のご略歴を振り返りたいと思います。久木田和丘先生は1975年北海道大学第1外科学講座入局後に岩見沢市立総合病院に赴任され、日本の透析療法のパイオニアである今忠正先生、大平整爾先生の下で研鑽を積まれました。大学に戻られ臨床・研究に勤しまれた後、1985年川村明夫先生が札幌北楡病院をご開設になる際に消化器外科・透析担当部長として参画されました。それ以降北海道における腎不全外科医療の中心として永くご活躍いただいておりました。この間日本透析医学会はじめ数多くの学会にご所属され、2012年札幌での第57回日本透析医学会学術集会・総会をはじめ幾多の学会で大会長を務められました。学会発表は国際学会16演題、国内学会290演題を数え、筆頭論文数も英文10篇、和文137編にのぼり、著書もJSDTバスキュラーアクセスガイドライン2005/2011をはじめ多数ございます。また実臨床も含めた腎不全外科全領域でご活躍されるほかに、北海道透析医会会長など要職も歴任しておられました。そのような激務の中2023年11月18日第22回日本透析アクセス学会にご参加されたおり、ご滞在中のホテルで急逝されました。本当に残念至極です。これまでの先生のご指導に心より感謝申し上げるとともに衷心よりご冥福をお祈り申し上げます。
さて腎不全外科研究会は、かつて敬遠されがちであった腎不全患者の外科治療に向き合い患者予後を改善させるため、1992年に太田和夫先生が結成されました。その後2008年からは故大平整爾先生が、2017年からは故久木田和丘先生が代表世話人をお務めになり現在に至ります。この間に血液浄化療法や手術技術・関連機器等に長足の進歩があり、近年は血液透析患者のmajor surgeryも特別なものではなくなってまいりました。しかしその一方で透析患者の70%超が高齢者となり多くの合併症を持つ症例が増加し、外科的治療の困難さはむしろ増大しております。また患者に合わせたtailor-made medicineが提唱されるようになった昨今では、腎不全外科治療に関与する医療者間の情報交換・情報共有は必須のものとなり、診療科を横断する研究会として本会の存在意義は増していると感じます。
今後は日本腎不全外科研究会の発展に全力をつくす所存でございます。会員の皆様におかれましては、これまで同様にご協力を賜れますようお願い申し上げます。
令和6年8月
日本腎不全外科研究会代表世話人 前野 七門